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紅ノ蝶

紅ノ蝶

満月の夜に



満月の夜に





「それじゃ、おやすみさ。リナリー。」

「おやすみなさい、リナリー。」

「おやすみアレン君、ラビ。」

あいさつを交わし、自室の部屋のドアを閉めた。

「今日は楽しかったなぁ…。」

部屋の奥にある大きな窓を開け、漆黒とも言える夜の暗闇の中に浮かぶ満月を見ながらリナリーは呟いた。


今日はリナリーの誕生日であった。

教団に残ってる人たちが誕生パーティーを開いてくれたのだ。


「満月かぁ…。」

まん丸の月を見てある『約束』を思い出す。





小さいころ、リナリーは夜が嫌いだった。


暗闇が怖くて、怖くて仕方がなかった。

そんな彼女に暖かい光、そう月の存在を教えてくれた彼との約束だ。

「お前、何で泣いてるんだ?」

木の近くから聞こえるすすり泣く声が聞こえ、少年はリナリーに近づいた。

「…夜が嫌なの…。」

「………。どうしてだ?」

「真っ暗で大切なものが全部無くなってしまいそうで怖いの。」

小さな声で呟いていたが少年に聞こえるには十分辺りは静かだった。

「そうか…。でも、夜には暗闇だけあるわけではない。」

「…。何があるの…?」

「月がある。暖かい光が夜を照らしてるんだ。」

「あたたかい光…?」

「あれだ…。」

少年が指さすと雲で隠れていた月は顔を出し、暖かな優しい光で二人を照らした。

「わあ…。きれい…。」

「だから夜は暗闇だけじゃない。月が照らしてくれているんだ。」

「うん!」

にこっと笑うリナリーの顔に少年は少し頬を赤く染めた。

「ねえ、また一緒に月を見てもいい?」

「…。ああ。満月の日に一緒に見よう。」

「満月?」

「月は毎日形が変わるんだ。今日みたいにまん丸の月を満月と言うんだ。」

「そうなの!?じゃあ、満月の日は一緒にお月見ね。」





(こうして、夜が怖くなくなったのはあの時の神田のおかげなんだよね。)


「そういえば、ここ一年くらい一緒に月、見てないなぁ…。約束したのに」

ここ最近、AKUMAの数が増えエクソシストである神田とリナリーは任務の為、ゆっくりと月を一緒に見ると言うことができなかったのだ。


(今日は誕生日だもの少しぐらいワガママ言ってもいいわよね。言うのはただだし。)


「…会いたいなぁ…。」

思ってたことが口に出てしまっていることにリナリーは気づいていなかった。



「誰にだ?」


「えっ…。」

自分しかいないはずの部屋から声がしたのと、考えが声に出てることに驚き後ろを振り返った。

「鍵ぐらい掛けろよ。物騒だろ?」

「神田…。」

今、会いたいと思っていた人の登場にリナリーはかなりびっくりしていた。


「何で…?任務だったんじゃ…。」

「…そんなの終わらせてきた。それに…」

「それに…?」

「今日は満月だ…。」

神田は照れ隠しなのか軽く舌打ちをして、まっすぐリナリーを見つめていた。

「神田…!」

嬉しさのあまりリナリーは神田に抱きついた。

「…おい…。」

ゆっくりとリナリーの頭に手を置いて子供をあやすようになでた。

「覚えてたんだ…。」

「当たり前だろ?」

リナリーをベッドに座らせ自分も隣に座る。

「久しぶりだね。こうやっていっしょに月見るの。」

「そうだな。」

「私もいつも任務で…「リナリー。」

言葉を遮り静かに名前を呼んだ。

「誕生日、おめでとう。」

普段は見せないような眼差しでじっとリナリーを見つめピンク色の細長い包みを差し出した。

「…っ!ありがとう。開けてもいい?」

「ああ。」

包みの中にはピンクのハートのネックレスが入っていた。

「…つけてやる。」

「うん!」

「ねえ、神田。」

キラリとネックレスを輝かせ振り返る。

「大好き!!!」


静寂な暗闇の中、どちらともなくふたりの唇は重なった。





漆黒の中それを満月だけが照らし見つめていた。




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2008.03.02
2月20日はリナ嬢の誕生日でした。
遅くなったけど、ハッピーバースデー!
『20日って満月じゃないだろ?』っていうつっこみは心の奥にしまって置いてください。
ちなみにリナリーがもらったネックレスは、ドラマでのだめが千秋先輩からもらったあれみたいなものです。


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